ITってぶっちゃけ

IT業界は3Kだった

政治家はプレゼンのプロだと思ってました

先日「プレゼンテーション研修」なる研修の講師をやる機会がありまして、私は全然プレゼンのプロでも何でもないのですがシステムの提案書の説明などで多少の経験はありましたのでまあ基本くらいは話せるだろうと引き受け、「シナリオ準備」「事前練習」「プレゼンターの見た目」の三本柱で話そうと決定し、丸一日の研修を二回ほど実施いたしました。

そうこうしているうちに総裁選が盛り上がって、たまたま四人の候補者の演説やテレビ討論会などを見る機会がありました。政治家の方々はプレゼンなんて楽勝でこなすのだろうなと思っていたのですが、意外に皆さん普通の人っぽいところもあってちょっと親しみが湧きました。

 

河野太郎

「重要だと思う」「速やかに対応」「議論が必要」など、テンプレ的な単語をうまく散りばめて説明の練習を積んでいる印象を持ちました。断定的な口調には説得力を感じますが、ありふれたテンプレ的な強調語(非常にとか凄くとか絶対にとか)を多用する受け答えが多いので、自分の言葉で語りかけるという観点ではちょっとアピールが弱い印象を受けました。くどいというか飽きるというか。Twitterでは結構自分の言葉で語っていらっしゃるのにもったいない。失言を恐れているのかもしれませんが。

また、身振り手振りはかなり適当で話しの意味内容と合っていない(「非常に」と口で言っているのに前へ進める手振りだったり)ので、口パクがズレている歌手を見ているような、気になって話が全然頭に入ってこない時間帯もあったので、身振りも話のテンプレにマッチするように練習しておいたほうが良い気がしました。

 

岸田文雄

プレゼンの苦手な課長が四苦八苦しながらお客さまに一生懸命製品の説明をしているような感じで、とても好感がもてました。部長に常日頃から「お前は説明が下手だ、もっと堂々と話せ」と怒られているんだろうなという想像をかき立てられるような、見ていて「がんばれ、課長」と応援したくなるような感じでした。時々、「えー」とか「あー」とか言って話が止まる時は、たぶん思考が瞬断して頭が真っ白になってるんだろうなと想像でき、大事な場面で何度も同じような状態になったことのある私としては強い共感を覚えます。頭真っ白の対策としては経験上、ひたすら事前練習(リハーサル的な)です。私の場合、一回のプレゼンのために都合丸二日分くらいかけて一人でブツブツ呟いて発表練習をすると真っ白になることはほぼ無くなります。なので、政策のパターン毎に話す内容を決めておきひたすら部屋で受け答えの練習しておくと良いのではと思いました。ただ、司会者から想定外の話を振られた時は諦めるしかないですけれども。

 

高市早苗

どの話題も澱みなくすらすらと受け答えをしていたので、おそらく、事前に政策を練ってシナリオ化し各種の数字なども暗記して、さらにそれを言葉にする練習にもかなりの時間を割いて準備しているように感じられました。素晴らしいですね、プレゼンのお手本だと思いました。時々関西弁が出てくるのもアクセントになって、長い話でもストレスなく聞ける感じでした。あとはご自身の信念に基づいて話していらっしゃるので、ありふれた強調語を用いなくても言葉や表情にこもる熱意だけで強調ポイントが伝わって来る感じがしました。ただ時々、発言を始めた直後に一瞬「やべっ」という表情になって取ってつけたように笑顔になるのは、それはそれで可愛いのですが、たぶん鏡の前での作り笑いの練習が不十分だったのかなと感じました。話すときの作り笑顔、超大事ですね。常に笑っていると怪しい宗教勧誘みたいになってしまいますが、話の流れの中でタイミングよく作る笑顔は聞き手の心を和ませます。

 

野田聖子

準備期間が短かったということで仕方ないのかもしれませんが、自分が詳しくない話題を振られると思いっきり目が泳いで言葉に詰まってしまう場面が多く、「がんばれ!」と応援したくなりました。あとは、オフィシャルな言葉遣いに慣れていない印象(仕事のメールを話し言葉で書いてしまう新入社員みたいな)で言いたいことは頭の中にあるのだけれど単語が出てこなくて言葉に詰まるような印象を持ちました。たぶんフランクな場では裏表なくとても楽しく気さくに話ができる人なんだろうなと思いました。政治家っぽく無いところが好印象ですね。

 

日本人は政策はよく分からないけど何か変えてくれそうという雰囲気だけで判断する人が多い気がするので(たとえはうちの高齢の両親)、プレゼンの専門家を雇ってコーディネートを受けると立派な総裁(首相)になれるのではと思いました。本来は政策の妥当性で判断すべきだとは思いますが、ここまで社会が複雑化してしまうと政策の内容を完全に理解してもらうのは難しいと思われるので、ある程度見た目の印象による判断になってしまうのは仕方ないことなのかなと思います。

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